失われたフレームと詩の最後



フレームのためにじいさんは死んだ
パンの耳のようにスライドする背景の
実験的な環境に
詩の最後はなじめずにいたのだ
じいさんのいつものセリフ
「Internet explorerにて詩を提示する
方法を
研究する」
ブラウザと格闘し続けたじいさんの晩年

そのありさまはまるで
土砂降りの野球場のごとしだった
チケットは手のなかで沈黙し
波ばかりが大西洋のごとくうごめいていた
どうにか国境を越えようにも
フレームというやつにはこれっぽっちも知性がない
例えばじいさんは3日前から土砂降りだったと言うし
私は4回表の攻撃途中からと主張するような塩梅だった

じいさんは落ちつきなく煙草を吸い
昼間から酒を飲んでいたっけ
「アル中」
とじいさんの娘たちが言う
今もじいさんの灰皿には
吸い殻が折り重なって山となったまま
火は何も言わずに消えてしまった
しかも
これと同じものが流しを詰まらせて
とてつもない異臭を放っているのだ
それは見えない恋の変わり果てた姿
床では酒瓶がだらしなくのびて
寝返りを打つたび
ごろごろという音をたてる

じいさんよ
ぬかるんだフレームの小道の
さらに奥深く
ほかの大きな詩がいるという噂の場所を
地図に描いてもらおう
「きてくれてありがとう」
私は言う
「え?」
そして私は聞き返した
私が私に語りかけるとき
いつも心が乱れる
表紙を飾るようなピチピチした
水着のお姉ちゃんたちのピンナップ
今日も雨が降っている
13歳のころのように
詩の最後にたどりつくには
車がないととても無理だ
朝のずいぶん早い時間
詩がもっとも澄んでいる時間を
ねらったのだがね





2005年9月28日

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