絵本でゆたかに子育てを!

「『新婦人しんぶん』を読んだのですけど」とお電話を掛けてこられたのは、奈良は南生駒に住むHさんです。講演の依頼です。
『新婦人しんぶん』に私のインタビュー記事が載ったのをHさんは読んで、「溝江さんは、中高年になってからでも、諦めないで続けられたんですね。そのバイタリティに惹かれました」と、そうおっしゃられました。
なるほど、私のように中高年になってから、いろいろと手をつける人は珍しいのかも分かりません。若い時は子育てに追われ、自分の時間を作るのは難しいことです。私も自分の時間を取ることはできませんでした。また私の場合は共働きでもありましたので、子育てとの両立は尚更難しかったです。その上、私の子どもは体がとても弱かったので、大変さも並み大抵ではありませんでした。しかし、作家になりたい、本にかかわる仕事をしたいという夢は捨てませんでした。苦しいこともいっぱいありました。しかしそこを乗り越えられたのも、目標があったからだと思います。そこを、Hさんは、そうおっしゃって下さったのだと思います。
子育て中のお母さんたちに、私の子育ての経験や、絵本・児童文学作家としての経験などのことで、話をして欲しいと言うことでした。私は喜んでお引き受けをいたしました。
講演は10月31日(金)演題は『絵本でゆたかに子育てを!』に決まりました。
朝10時からの講演です。朝の講演にもかかわらず沢山の方がお見えです。

玲子の話を一生懸命聞いてくれています。

いつものように、私自身の体験を中心に話していきました。私の子ども時代のこと。私の読書体験。子育て中の喜びと悩み。皆さん真剣に聞いて下さって、共感すると、うんうんと頷きながら聞いて下さいます。長男の入院中の話を本にした「ドウガネブイブイ」の話をしますと、ハンカチで涙をぬぐって聞いて下さいます。

絵本を掲げて話をしている玲子。

講演の終わりころ入ってきた男のかたがありました。「劇団大坂」の舞台監督の熊本一さんだったのでびっくり。南生駒に住んでいらっしゃるのは聞いていましたが、講演にきて下さるとは、と目を見張りました。後でお聞きすると、「図書館に来てフト見ると、看板に私の名前が書いてあったので上がってきました」ということです。思い掛けない出会いがあったのも嬉しいことでした。
さて、講演の後は、保育されていた子どもたちも入ってもらって、親子一緒に紙芝居を楽しんでもらいました。「きんとっと」と「ふくろう」の二本です。
紙芝居がはじまると子どもたちの目が輝き、前に寄ってきてじっと見つめます。子どもたちは絵本も大好きですが、紙芝居も大好き。食い入るように側に近寄り見上げています。テレビで育っている子どもたちでも、紙芝居はまた格別なのです。演者と子どもたちの心が交流します。紙芝居は日本が生み出した日本独特の文化です。絵本とまた違った味わいがあります。テレビのように一方的に流れてくるのと違い、演者とのコミュニケーションがあり、共感を創りだせることです。

紙芝居に目を輝かせている子どもたち。

終わると、子どもたちは、小さい手で一生懸命パチパチと拍手をしてくれます。
あたたかいものをいっぱいもらって、会場を後にしました。
(註)
『新婦人しんぶん』は、一言でいうと、憲法を守り、子どもの幸せを願い、世界の婦人と手をつないで平和な世の中を作ろうという目標を掲げて発行されています。

 



2004年2月1日  溝江玲子


玲子のプロフィール

溝江玲子 山羊座で12月27日と暮れも押し詰まった大変忙しい時期に生まれました。
昭和12年、旧満州国奉天に生まれて、上海に育ち、終戦後に大連から引き揚げてきました。もう、戦争はこりごりです。
職業はと聞かれると、答えがいく通りもでてきます。一番格好よく答えると、作家かな。それから、7年前立ち上げた遊絲社(ゆうししゃ)という出版社の代表です。
趣味は読書とお絵描き、素材のページのキャラクターの原画も描いています。
へこんだときに呟く言葉は「人間 万事 塞翁が馬」。これで、幾多の試練を乗りきってきたのです。

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